ファンが直接払う
数百万回再生されたミュージックビデオの広告収益が、一五〇ドルでした。制作費は一万ドル超、クレジットカード二枚を使い切った——ミュージシャンのジャック・コンテはこの体験から二〇一三年、ファンが作り手へ毎月直接払う仕組みを作り、パトロンにちなんでPatreonと名づけます。ルネサンスでメディチ家が芸術家を支えた、あの言葉です。回帰の朱い線を、この地図は簿記と銀行の帯から引きました。二〇一七年にはYouTubeがスーパーチャットを載せ、配信の画面を投げ銭が流れはじめます。先行は日本と中国にありました——SHOWROOMのギフト(二〇一三年)、WeChatの賛賞(二〇一五年)。そして年間スパチャの世界上位を、日本のVTuber事務所ホロライブの配信者がまとめて占める年が続いています(集計サイトの非公式ランキングによる数字です)。ニュースレターのSubstack(二〇一七年)は「広告依存への反発」を創業の動機にはっきり掲げました。広告が払う百九十年の川の隣に、ファンが直接払う細い川が、いま音を立てて流れはじめています。