合本
1873年7月20日、第一国立銀行が開業します。「国立」と名乗っていますが、政府の銀行ではありません。アメリカの national bank をそのまま訳したせいで、民間の銀行が「国立」を名乗ることになった——翻訳期のねじれが、そのまま名前として残った例です。渋沢栄一はこの銀行を皮切りに、生涯で膨大な数の会社に関わりました。よく「約500社」と言われますが、東京商工会議所が数えた481社には、祝辞を述べただけ、社史に題字を書いただけ、といった名目の関わりも含まれています。実際に事業に関与したのは470社前後と見るのが妥当なようです。彼が使った「合本」という言葉——資本と人を持ち寄って公益のために事業を興す——も、本人の口から出た言葉であることは確かですが、どこから持ってきたのかは記念財団にも分かっていません。「〜主義」として体系化したのは後の世です。三方よしも、先用後利も、そして合本主義も。日本の商いの思想は、こうしてあとから名前をもらってきました。