月賦
フォードに追いつけなかったGMは、車ではなく「買い方」で勝負しました。一九一九年設立の金融子会社GMACは、頭金三割五分、残りを一年で分割という条件で売り、二〇年代の半ばには新車の過半から四分の三が信用販売になります。GMACのうまさは、買う人への分割払いと、販売店への在庫の資金繰りを同時に引き受けたことでした。売り場そのものを金融で立たせたわけです。ヘンリー・フォードは借金で車を買わせることに反対でした。対抗して一九二三年に出した仕組みは、客に週五ドルから十ドルを店の口座に積み立てさせ、代金が貯まってから車を渡すというもの——つまり先払いの貯金です。「それなら銀行に預ければいい」と見抜かれて、うまくいきませんでした。そして一九二八年、フォード自身も自動車ローンの会社を作ります。GMが販売台数でフォードを抜いたのは一時的には一九二七年、決着がついたのは一九三一年、大恐慌の最中でした。製品の性能ではなく、払い方の設計で首位が入れ替わっています。
神話の訂正
分割払いはGMの発明
GMより百年以上前から動いていました。一八〇七年、ニューヨークの家具店カウパースウェイト商会が分割払いを始めています。一八五〇年代にはシンガーが「頭金一ドル、週一ドル」でミシンを売り、一年で売上を三倍にしました。その方式も、シンガーがピアノ販売店から借りてきたものです。一八四〇年から九〇年にかけて月賦を世に広めたのは、家具・ピアノ・農機具・ミシンの四つでした。GMACがしたのは、その仕組みを自動車という高い買い物に持ち込んだことです。