ムダーラバ→コンメンダ
イスラム法のムダーラバは、資本を出す人と、実際に旅をして商う人を分け、利益を約束の割合で分ける契約です。この契約でいちばん面白いのは、損失の扱いでした。事業が失敗したとき、出資者は資本を失い、旅をした側はお金では何も失いません——失うのは、費やした時間と労力です。損には二種類あることを、制度が正面から認めていました。いまで言う「汗の出資(スウェット・エクイティ)」の、八百年以上前の先祖です。地中海の側では、これによく似たコンメンダ契約が十世紀に現れ、十二世紀から十四世紀にかけて広く使われます。片方だけが資本を出す形では、利益は出資者に四分の三、旅商人に四分の一。両方が出す形では二対一で出し合って利益は折半——配分の型まで決まっていました。ついでに書いておくと、ユダヤの商人たちは実務のうえで、自分たちの法にもとづく契約より、ムスリム式のほうをよく使っていたことが分かっています。宗教の壁を越えて選ばれていたのは、使い勝手のいい契約のほうでした。
神話の訂正
イスラムのムダーラバが、そのままヨーロッパのコンメンダになった
一本の線で伝わったという説は、まだ決着していません。起源の候補は、バビロニアのタップトゥーム、ギリシャ・ローマの海上貸付、ビザンツのクレオコイノニア、ユダヤ商人のイスカ、ムスリムのキラードと複数あり、コンメンダにはどれとも違う独自の特徴もあります。「類似がいちばん強いのはキラード(ムダーラバ)だ」というところまでが、いま言えることです。