徴税請負
徴税や公共事業をローマ国家から請け負った大規模私企業、ソキエタス・プブリカノルム。属州の徴税権は監察官が慣例五年の契約で競争入札にかけ、騎士階級の組んだ会社が落札しました。キケロは、この入札が「ローマ市民の面前でのみ」認められたと書いています。大きな資金が要るときは、持分を売るのではなく、下請けの副組合を組む形で対応しました。「株式会社の先祖」と長く語られてきた物語の半分は神話でしたが、国家との契約に資本を束ねて挑む形そのものは、千六百年後の勅許会社を確かに予告しています。
神話の訂正
ローマには株式市場があった
「持分(パルテス)が売買されていた」という通説は、二〇一六年のポワトラとジェラニオの研究(Explorations in Economic History)で強く否定されました。カストル神殿のそばに取引所があったという話は後世のロマン化で、入札に参加できる騎士階級はそもそも七百三十人ほど。持分の取引をめぐる紛争の記録が、ローマの膨大な法史料に一件も残っていません。この通説は、十九世紀の文献学者がキケロの一文に近代の株式市場を重ねて「発見」してしまったものでした。