修理と再生
二〇一一年十一月二十五日、ブラックフライデーの朝のニューヨーク・タイムズに、パタゴニアは自社のジャケットの写真と「このジャケットを買うな」の一行を全面で出しました。広告費は五万七千ドル。二〇一三年に始めた「ウォーン・ウェア」は、修理と中古の買い取りです。二〇二四〜二五年度には世界で十七万四千七百九十九点を直しました。売らずに直す商いの売上は千三百万ドル——会社全体の一%ほどで、大きくはありません。それでも、この型がいま伸びているのは制度が押しているからです。二〇二一年、フランスは製品に「修理しやすさ」の点数表示を義務づけました(世界初)。ニューヨーク州が二〇二二年、カリフォルニアが二〇二三年、EUは二〇二四年に修理する権利の指令を出し、Appleも二〇二二年に自分で直すための部品を売りはじめました。直せない設計への、逆流です。そして二〇二二年九月、創業者のシュイナードは約三十億ドルの全株式を信託と環境団体に譲りました。「地球が唯一の株主になった」と会社は書いています。売らずに貸す川の隣に、売ったものを長く使わせる川がある——一子相伝で技を継いできた宮大工の帯と、この型は、同じことを別の言葉で言っています。
神話の訂正
「このジャケットを買うな」と言ったら、売上が伸びた
数字だけを見れば、翌年の売上は三割ほど伸びています。けれど、その年は新しい店を十四も開いた年でもありました。広告一本が売上を押し上げた、と結ぶには因果が足りません。「反消費を掲げたら儲かった」という話は気持ちよく回りますが、この地図は、気持ちよさのほうを疑います。