定価と返品
ブシコーが小さな織物店に共同出資で加わったのが1852年、その持分を全部買い取って自分の店にしたのが1863年。この十年あまりのあいだに、定価・返品自由・入店自由・季節セール・新聞広告が少しずつ揃っていきました。売上は50万フランから500万フランへ。とくに徹底したのが「入店自由」で、この店には客に声をかけて売り込む店員(フロアウォーカー)が置かれていませんでした。「入ったら買うまで出られない」という当時の空気そのものへの、意図的な反抗です。買わずに出ていける店をつくったら、人が集まった——無料お試しの遠い先祖が、ここにいます。
神話の訂正
ボン・マルシェが世界初の百貨店
これはボン・マルシェ自身が公式に掲げる社伝です。英ニューカッスルのBainbridge's(1849年・週ごとの部門別売上記録が残る)や、米ニューヨークのA.T. Stewart's(1846年)のほうが早い。学術の評価は「諸要素を統合したシステムとして最初の"近代的"百貨店」という限定つきで、単純な年代競争としては決着していません。