神殿貸付
バビロニアの神殿は、寄進の集まる場所であると同時に、貸付の記録を残す最初期の金融機関でもありました。シッパルの太陽神シャマシュの神殿には、前十九世紀まで遡る貸付の記録があります。借り手の名、貸した量、返す期限、立会人——そして最後は「シャマシュに誓って」で締めくくられます。利子が返せないときには、代わりに神殿へ食料を納めて帳消しにする取り決めもありました。利子とお供え物が地続きだった時代です。ただし「世界最古の銀行は神殿だった」という言い方は、一九四二年のブロンバーグの論文に始まる一つの説で、学界の合意ではありません。神殿の貸付は営利よりも備蓄と再分配と扶助の色が濃く、預金を受け入れて信用を仲介するという意味での「銀行」に近いのは、むしろ千年以上あとに現れる民間の家のほうです。新バビロニアのエギビ家は五世代・粘土板千七百点を、ニップルのムラシュ家は前五世紀の農地金融の記録を残しました。金融の起源をひとつの建物に帰すること自体が、たぶん少し急いだ話でした。